水を流せば必ず低い方へと流れてゆく。その途中で木片があったなら、決して押さえつけて上を流れることはせずに、木片を浮かべて低い方へ、低い方へ流れる。そして木片はその水に浮かべられ、水の流れる方へと動いてゆく。一見すると浮かべられて上にいる木片が偉いようにも見えるが、下に入った水の動きに合わせて動かされている。逆に水は相手を上に置いて、自らは下に置いて、言い換えれば相手を勝たせて通るとも言えるのである。
人も同じでは無いでしょうか。働いていれば立場も上がっていく。部下を持つ立場となり、仕事を教え育てていく。この時、水と違って相手を上に置かず、逆に押さえつけたらどうなるでしょう。
高圧的に上から指示し、失敗したらここぞとばかりに怒鳴りつけ、相手の心を折るような言動をとる。
これでは相手は動けなくなってしまいます。
そうではなく、水のように低く低く。立場は上でも「心は下へ」相手の心の下に入り、相手を浮かせれば、相手はおのずと自分の動く方へついてくることになる。
では、どうすれば人の心の下に、自分の心を置く「低い心」となれるか。それは
【自分の都合を優先しないこと】
では無いかと思います。
良くある光景ですが、
「分からないことがあれば何でも聞きなさい」
と伝えておきながら、自分は自分の仕事でバタバタしており、顔もしかめっ面で声を掛けるなオーラをだす。
これでは相手は聞くことが出来ません。
特に新人なら上司、先輩に声を掛ける事すら勇気が要ります。
聞けと言っても聞かない、空気を読まない、勝手に判断して行動する、報告連絡相談が無い…
相手を罵り愚痴をこぼす前に、自分は相手と話を出来る環境を整えていたのか。
私は全く出来ていませんでした。
自分の都合を優先して、いつも忙しそうに声をかけるなオーラを出しまくりでした。それでいて部下には「いつでも、何度でも聞いてきなさい」と優しい上司面をしていました。
そうではなくて、自分から声をかけていく。
戸惑っている、分からなくて手が止まっている、容量オーバーで対処しきれていない…注意して見ていなくても、これくらいなら見ればすぐにわかる事だと思います。
それを相手が聞いてくるのを待つのではなくて、自分から声をかける。
大丈夫か?と一声、これだけで大きく救われる時がたくさんあると思います。
この時、自分の都合を優先していたら、見て見ぬふり、もしくは本当に気づくことができなくなります。ほんの小さなことです。困っている部下に声をかける、これを実践するだけで大きな変化、自分の心を少しずつ低くできると思います。
そして、その次は普段から声をかける。
はじめは何でもいいと思います。挨拶+天気の話、昨日のテレビの話、ご飯の話…ほんの二言、三言会話をするだけでまた変化が出てきます。
それは相手の関心事が分かってくる。
だんだん、この話なら乗ってくるなというのが分かってきて会話が弾みます。もちろん一朝一夕にはいきません。コツコツと積み上げていかなければいけません。しかし、それは後に
「承認」
に変わっていきます。普段からの会話で、相手とのコミュニケーションを取り、相手の関心事に興味を持つ。それが相手に伝わって「この上司は自分の事を分かってくれている、観てくれている」と信頼に変わっていきます。もうここまでくれば、信頼関係を築くことができれば、相手は自分の指し示す方へ動いてくれることでしょう。
「水の心、低い心」
自分を優先せずに相手に目を向け、耳を傾け、相手の関心事に興味を持ち、コミュニケーションを取っていくことで、自分の心を相手の心の下に置くことができて、相手を動かすことができるようになると思うのです。